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詩劇=夢乃月愛花と美しき乙女達

その2~ユメルサイド

少女は、いつもどおりに、真夜中2時になると、時計台の下に到着する。少女の名前は、「ユメル」。ユメルは、いつものように、まずは時計台周辺に人がいないか、確認をする。ユメルは、人と話すことが出来ない。もし、話をしてしまった場合は、彼女自身消えてしまい、二度とこの音色を聴かせる事が出来なくなるからだ。しばらくして、時計台の周辺の確認が終わると、早速演奏の準備を始めた。楽器ケースの中から、フルートと楽譜を取り出した。ユメルは、今日何を演奏するか、楽譜と夜空を見ながら考えている。夜空の星を見たり、月を見たりしながら、決めることも多い。しばらくして、ユメルは決めた。今日の演奏曲は「ムーン・レイン」という曲だ。少し切ないバラードなのだ。ユメルは、フルートを口に構えて、演奏が始まった。まずは、静かな音色から入ってゆく。少しずつ、せつない音色へと変わってゆく。まるで、雨の日に、ひとりせつない部屋の中で、雨を見ているような光景だ。それをユメルは、強く心の中で、イメージしながら吹いている。ユメルが吹くフルートは、月夜の空に輝いてる、みんなに聴かせる演奏会だ。ユメルには夢があった。それは、「たったひとりの信じる誰かと一緒に演奏すること」だ。しかしそれは、ユメルにとって、とても悲しい夢であった。次回に続く・・・


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